治療の選択肢

睡眠時無呼吸症候群が軽症の場合、減量や生活習慣の見なおしにより無呼吸の改善が期待されますが、中等~重症の場合は専門的な治療が必要です。
専門的治療としては、口の中に装着するマウスピースをはじめ、下記に説明するCPAP(シーパップ)やナステント、さらに重症の患者さんでは外科的手術といった選択肢があります。これらの中から重症度にもとづき、患者さんの希望を反映しながら無呼吸の改善を試みていきます。

CPAPによる治療

CPAPをしている人睡眠時無呼吸症候群が軽症の場合、減量や生活習慣の見なおしにより無呼吸の改善が期待されますが、中等~重症の睡眠時無呼吸症候群に対しては、CPAP(Continuous positive airway pressure:経鼻的持続陽圧(けいびてきじぞくようあつ)呼吸療法)と呼ばれる治療法が適しています。
CPAPは現在、睡眠時無呼吸症候群の治療として、国内外でもっとも普及している治療法です。CPAPの本体と、そこから空気を送るチューブ、鼻に当てるマスクからなり、睡眠中にこれらを装着して気道へ空気を送りこむ仕組みです。それにより気道の閉塞を防ぎ、睡眠中の無呼吸を改善することが期待されます。 「マスクをつけると違和感があって眠れないのでは」「逆に呼吸が苦しそう」と不安に感じる人がいるかもしれません。しかし、実際には、治療を開始した翌朝から効果が得られることが多く、「すっきり目が覚めた」「日中の眠気が消えた」という患者さんも多くおられます。 また、合併する生活習慣病の改善も認められており、長期的には、心臓や脳などの生命にかかわる重大な病気の発症を減らし、長く生存できることが期待されています1)
日本では、1998(平成10)年から健康保険の適用となっており、原則1ヵ月に1回、診察のために通院が必要となります。

1)循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.Circulation Journal Vol.74, Suppl. II, 2010

ナステントによる治療

睡眠時無呼吸症候群の治療としてはほかに、鼻からチューブを挿入し、気道を広げるナステントという機器もあります。
ナステントは、緊急救命時の気道確保の手法を応用したもので、チューブを挿入して気道が狭くなるのを防ぎ、睡眠時の呼吸を助ける効果が期待されます。軽量のため、出張時や旅行時に携帯し、宿泊先で使用することも可能です。
 保険診療の対象外ですが、ナステントを使用するにあたっては医師の診察のもとフィッティングを行う必要があります。これは、鼻の穴から気道までの長さや、ナステントの入りやすさ・気道確保のしやすさなどが人によって異なるためです。
フィッティングにより最適な長さのナステントを選択すれば、それを医師が「処方指示書」に記載し、患者さんは処方指示書を持って販売店で購入、就寝時に使用する流れとなります。

睡眠時無呼吸症候群を放置しない

睡眠時無呼吸症候群による無呼吸を放置すると、生活習慣病をはじめさまざまな重大な病気を招くだけでなく、居眠り運転などにより他人の命も危険にさらすことになります。 睡眠時無呼吸症候群は治療が可能な病気です。睡眠時無呼吸症候群であることが疑われたら、まずは生活習慣を見なおすと同時に、医療機関を受診して検査を受け、専門的治療を受けることを考えましょう。